Inheritance
バイクを相続したときの手続き——四輪よりずっと簡単です
親が亡くなってバイクが残った。四輪の相続手続きを知っている人ほど身構えますが、バイクはまったく別です。通常の名義変更に「亡くなったこと」と「あなたが相続人であること」を示す書面を足すだけで済みます。
遺産分割協議書も、相続人全員の印鑑証明書も、原則として要りません。理由は、バイクが道路運送車両法第4条で「登録」の対象から外されているから。乗り継ぐなら通常の名義変更+戸籍、乗らないなら名義変更せずにそのまま廃車できることが多いです。🔴 3月中に動いてください。
なぜ四輪より簡単なのか
四輪の名義変更(移転登録)では、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、被相続人の出生から死亡までの戸籍……と大量の書類が要ります。バイクは、これがありません。
理由ははっきりしています。
登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ、第三者に対抗することができない。
四輪の移転登録は、所有権の対抗要件の制度です。誰が所有者かを国が公示する仕組みなので、所有権の移転が厳格に審査されます。
自動車(軽自動車、小型特殊自動車及び二輪の小型自動車を除く。……)は、自動車登録ファイルに登録を受けたものでなければ、これを運行の用に供してはならない。
バイクは登録の対象外なので、この厳格さがそのまま持ち込まれません。軽二輪の「記入」も小型二輪の「変更記録」も、行政上の記録を実態に合わせる手続きにすぎないからです。原付にいたっては、市区町村の課税標識の付け替えです。
バイクの相続手続きは、「通常の名義変更+亡くなったことと相続人であることを示す書面」で足ります。印鑑証明書を求められることは、まずありません。求められたら、四輪の手続きと混同されている可能性があります。
区分別・やることの早見表
| 区分 | 手続き | 窓口 | 追加で要る書類 |
|---|---|---|---|
| 原付 | 廃車申告+標識交付申請 | 市区町村役場 | 死亡が分かる書面/相続人であることが分かる書面 |
| 軽二輪 | 軽自動車届出済証記入申請 | 運輸支局 | 同左 |
| 小型二輪 | 自動車検査証の変更記録 | 運輸支局 | 同左 |
手続きそのものは通常の名義変更と同じです。違うのは「譲渡証明書」の代わりに戸籍関係の書面を出すという点だけです。手順は バイクの名義変更(原付は こちら)を見てください。
バイクの相続は件数が少ないので、窓口でも都度確認になることがあります。行く前に「相続でバイクの名義を変えたいのですが、何が要りますか」と電話で確認してください。1本の電話で二度手間が防げます。
必要になる書類
基本セット
- 手元の書面(標識交付証明書/軽自動車届出済証/自動車検査証)——原本
- 被相続人の死亡が分かる戸籍謄本または除籍謄本
- 相続人の戸籍謄本(被相続人との続柄が分かるもの)
- 新しい所有者の住民票(発行後3か月以内)
- 印鑑(認印)
- 自賠責保険証明書(有効なもの)
- ナンバープレート+現車——原付、または支局をまたぐ場合
四輪のように出生から死亡までの連続した戸籍を求められることは、まずありません。「被相続人が亡くなったこと」と「申請者がその相続人であること」が分かれば足ります。被相続人の除籍謄本1通に、両方が載っていることが多いです。
相続人が複数いる場合に足すもの
- 遺産分割協議書(バイクの車名・車台番号が書かれているもの)、または
- 他の相続人の同意書・譲渡証明書(「このバイクは○○が引き継ぐことに同意します」)
遺言でバイクの承継者が指定されているなら、遺言書(公正証書遺言の正本・謄本、または検認済みの自筆証書遺言)を出します。この場合、他の相続人の同意書は不要です。
相続人が複数いるとき
法定相続人が複数いる場合、バイクは相続財産の一部です。誰が引き継ぐかを決める必要があります。
いちばん簡単な方法は、他の相続人から同意書または譲渡証明書をもらうことです。次のような1枚で足ります。
同 意 書
被相続人 (令和 年 月 日死亡)の
所有していた下記車両を、相続人 が
取得することに同意します。
【車両】
車 名
車台番号
令和 年 月 日
【相続人】
住 所
氏 名 印
バイクは相続財産です。他の相続人とのトラブルの種になります。書面を1枚もらっておけば済む話なので、面倒がらずに取ってください。
逆に言えば、実印も印鑑証明書も要らないので、他の相続人の負担も軽いです。認印を1つ押してもらうだけです。
乗らないなら、廃車が正解です
相続したけれど乗らない——この場合は、名義変更をせずに、そのまま廃車手続きができるかを窓口に確認してください。
相続人が死亡の事実と相続関係を示せば、廃車の手続きを受け付ける運用が一般的です。「名義変更してから廃車」という二度手間を避けられます。持ち物は通常の廃車の持ち物+戸籍関係の書面です。
- 原付——市区町村で廃車申告(やり方)
- 軽二輪——運輸支局で軽自動車届出済証の返納。返納証明書を必ずもらってください
- 小型二輪——運輸支局で自動車検査証の返納。返納証明書を必ずもらってください
返納証明書は、あとで気が変わって再びナンバーを取るときに必要になります(バイクの廃車)。
売る場合
売る場合は名義変更が必要です。買取業者に売るなら、相続人名義にしてから譲渡するのが原則です。
- まず相続で自分名義にする → その後に通常の名義変更で買主へ
- 業者によっては相続書類ごと引き取ってくれるところもあります。事前に相談してください
譲渡証明書は譲渡人本人が交付するものです(法第33条第1項)。亡くなった方の名前で作ることはできません。相続人が名義を承継したうえで、相続人が譲渡人になります。
税金の扱い
軽自動車税の賦課期日は、四月一日とする。
4月1日時点の所有者に、その年度の1年分がまるごと課されます。年度の途中で相続が発生しても、その年度の税は、4月1日時点の所有者=被相続人に課された分がそのまま残ります。
- 納税通知書が亡くなった方の名前で届いた場合でも、相続人が納付します
- 放置すると滞納になり、250cc超は次の車検が通りません(道路運送車両法第97条の2)
- 還付はありません。年度の途中で廃車しても戻りません
翌年の4月1日を越えると、また1年分が課されます。しかも相続人に。3月中に廃車まで終わらせてください。金額としては原付2,000円・軽二輪3,600円・小型二輪6,000円ですが、放置すれば毎年続きます(軽自動車税)。
バイクも相続財産なので、相続税の課税対象に含まれます。ただし中古バイクの評価額は一般に小さく、基礎控除の範囲に収まることがほとんどです。相続税全体の申告が必要かどうかは、税理士にご相談ください。
自賠責と任意保険
自賠責
自賠責は車両に付いています。被相続人が亡くなっても契約は残ります。
- 乗り継ぐ場合——保険会社で契約者・被保険者の変更をしてください(自賠責法第7条第2項の義務)
- 廃車にする場合——解約して残期間の返戻を受けられます。廃車を証明する書面と、相続関係が分かる書面が必要です
廃車した日ではありません。廃車が済んだらすぐに保険会社へ行ってください(自賠責)。
任意保険
被保険者が亡くなった場合、契約の扱いは保険会社によります。速やかに連絡してください。等級の引き継ぎができる場合(同居の親族など)もあります。
相続放棄をした場合
相続放棄をすると、そのバイクについて何もできなくなります。放棄した人は初めから相続人でなかったものとみなされるためです(民法第939条)。
- 名義変更も廃車もできません
- 他に相続人がいれば、その人が手続きします
- 相続人が全員放棄した場合は、相続財産清算人の選任など家庭裁判所の手続きが必要になります
相続財産を処分すると単純承認したものとみなされることがあります(民法第921条第1号)。バイクを売る・名義を変えるといった行為は、この「処分」に当たりうるものです。放棄を検討している段階では動かさず、先に弁護士や司法書士に相談してください。